次世代風力発電チャレナジー、墨田区の町工場で試作開発。原発を頼らずに全人類が電気を使える世界へ

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風力発電が初めて実現したのは19世紀。風車は紀元前から利用されており、風力をエネルギーに活用してきた歴史は古い。だが、その外観は大きく変化しておらず、発電効率、騒音対策、強風対策、生態系への影響、景観、用地確保など、様々な課題がありました。そんな中、チャレナジー(Challenergy)が研究開発を進めるのが垂直軸型マグナス風力発電機である。

風力発電機は、大きく4つに大別される。水平軸型プロペラ式、水平軸型マグナス式、垂直軸型プロペラ式、垂直軸型マグナス式だ。現在、主流となっているのは水平軸型プロペラ式で、おそらくどこかで目にしたことがあるだろう。これに対し、チャレナジーの次世代風力発電機は、垂直軸型マグナス式を採用した。同形式での発電は世界初で、既に日本の特許を取得、現在はアメリカ・中国・ドイツなどでの特許申請も進めている。マグナス効果とは、一様流中に置かれた回転する円柱または球に揚力がはたらく現象のことだ。原理は野球のカーブボールと同じで、同じ大きさの翼と比較して数倍のパワーを発揮する。

垂直軸型マグナス式の最大の魅力は、回転を止めれば「ただの棒」となることだ。仮に危険な事態が生じたり、稼動電源が確保できなくなったとしても簡単かつ安全に停止できるので、電源が確保できずに大惨事を引き起こした原発事故のような事態は招かない。さらに、無電化地帯の電化への貢献にも期待でき、台風発電も夢ではないという。


世界の風力発電においては、前年比10~30%超の伸び率を示し、順調に増加している。(NEDOより引用)


日本の風力発電設備の導入量においては、2013年度末に総設備容量約271万kW、総設置基数1934基となっており、こちらも増加傾向である。(NEDOより引用)


ただ、北海道・青森における風力発電設備の合計基数は、日本全体の25%以上を占めており、一部地域に偏っている状態だ。(NEDOより引用)垂直軸型マグナス式が、無電化地帯の電化突破口となることへの期待は大きい。


チャレナジー代表取締役CEOの清水敦史は以前、製造業大手のキーエンスに勤めていた。転機となったのは、2011年3月の東日本大震災。原発事故を目の当たりにして、会社を飛び出し、風力発電の研究へ注力した。「原発に頼らない世界を実現する」、「全人類が電気を使える世界を実現する」という思いを抱き、自宅での研究・実験を約3年間繰り返した。



この研究開発が実り、2014年3月、チャレナジーは知識プラットフォームのリバネスが主催する第1回Tech Plan グランプリで優勝した。そして10月1日、リバネス、ものづくり実験施設「ガレージスミダ」を運営する浜野製作所、投資・テクニカル支援を行うグローカリンク、これら3社が連携したインキュベーションプラットフォームの第1号案件として採用された。今後、チャレナジーは墨田区の町工場との連携を強め、風力発電機の試作開発を行っていく。2015年夏に沖縄で台風発電の実験を行い、その後には大型の資金調達を見据えているという。

このインキュベーションプラットフォームでは、リバネスが事業化支援、ガレージスミダが試作・開発支援、グローカリンクが投資・経営支援を行っている。金属加工、絞り加工、型抜き、バレル研磨、プラスティック加工、プレス加工、ゴム加工、メッキ加工、塗装など、幅広い分野の技術者が結集する墨田区は、街そのものがまさにインキュベーション施設である。入居したテクノロジースタートアップは町工場のものづくり技術の知見を活用できると共に、町工場は(資金調達のしやすい)スタートアップから発注を得れるので、双方にメリットが大きい。リバネス代表取締役CEOの丸幸弘は「作りたい人と作れる人を一カ所に集めて組ませ、モノがないと話が進まないデスバレーを解決したい」と話す。


同プラットフォームでは、1社あたり3年以内を目処に、どんどん巣立たせていく考えだ。今後の入居企業として、既にオリィ研究所モルキュア(MOLCURE)の名が上がっており、最大20社ほどを受け入れていく。ハードウェアベンチャー特有の課題として、物理的スペースが必要なことが挙げられる。さらに、そこで登記ができ、大きな音を出しながら夜まで作業できるかも重要だ。東京都内にはFab Cafe(渋谷区)、MAKERS BASE(目黒区)、MONO(江東区)などが存在するが、ものづくりスペースに対する需要は強まるばかりだ。町工場との連携という、新たな選択肢を提示した同プラットフォームが果たす役割は大きいだろう。

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