【インタビュー】快適な気温に自動調整、香港発のエアコン制御器Ambi Climate

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香港を本拠とするハードウェアスタートアップAmbi Labsは、エアコン自動制御器Ambi Climateを提供しています。自動温度調節の分野においては、Googleが32億ドルで買収したNestが有名ですが、アジア圏の住宅の場合、欧米のような空調一括管理システムがないためにNestを導入できません。そこでAmbi Labsは、「ユーザーが快適な空間に感じるよう、エアコンの環境設定を自動調整する」という基本機能を向上させつつ、アジア特有の問題解決に焦点を当てています。


彼らは2014年6月、シンガポールのテクノロジーメディア e27 が開催したアジア最大級テックカンファレンス ECHELON 2014 においてPeople’s Choice Award(観客賞)を受賞しています。下記は、Ambi Labs の Julian Lee CEO へのインタビューです。


問:ドイツからはTado、イスラエルからは Sensiboなど、古いエアコンをスマート化するデバイスが色々と登場しています。それらに対し、Ambi Climateは何を強みとされているのでしょうか?

答:良い質問ですね!まず、Tadoは私たちとは違った問題を解決しているように思えます。彼らは、ユーザーが自宅に近付くとエアコンが付き、どこかへ出かけると消える、といった機能に集中しています。しかし、私たちがアジア圏で調査してみると、これは大きな問題ではないことが判明しました。実際、アジア圏のユーザーがエアコンの電源を消し忘れるのは、1年に1度あるかないか程度だったのです。

また、アジアの都市は住むにしても、働くにしても、遊びにしても、どこも大抵混雑しています。にも関わらず、電気代が高止まっているというリスクを抱えているのです。ユーザーは私たちに「この状況は到底受け入れられない」と語りました。


問:なるほど。例えば、フィリピンは熱帯性気候でありながら、アジアで最も電気代が高いという問題を持っていますね。

答:快適さを保ち続けたいのなら、季節や室外の状態が変化するごとに、エアコンの設定を変える必要があります。しかし、その手間が1日に何度も費やされることがしばしばあります。我々がアジアで調査したとこによると、エアコンのユーザーの3割は、このような設定気温の変更や電源のオンオフを細目に行っているのです。結果的に、冷暖房を効かせ過ぎたり、電気代を浪費しています。Ambi Climateは、ユーザーが快適に感じ続けられるよう、エアコンの自動調整を行うと共に、電気代の節約にも貢献するのです。


問: イスラエルのスタートアップSensiboについては如何でしょうか?

答:主な違いは2つあります。まず、SensiboはPMV(1970年代に発表された快適性を表す指数で、日本メーカーのエアコンでも採用されている)を用いています。対して我々は、最近研究者に見直されているHumidex(気温や露点の温度から導く指数で、カナダで採用されている)を用いています。さらに、私たちは部屋のコンディションを感知し、自動調整を行うアルゴリズムを特許申請中です。この自動調整機能は、ユーザーが気温を不快に感じるよりも前に調整を完了させます。

また、 Sensiboのデバイスはエアコンに直接貼付ける必要がありますが、 Ambi Climateはどこに設置しても問題ありません。室内ならば、本棚だろうが、TVデッキの下だろうが問題ありません。アジアでは賃貸物件が多いため、こういった自由度はとても重要です。


問:昨今、ハードウェア特化型インキュベーターに参加するスタートアップが少なくありません。しかし、Ambi Labsはその道を選択していませんね。なぜでしょうか?

答:ハードウェアスタートアップインキュベーターは、本当に素晴らしいアイデアだと思います。実際、製造におけるリスクを大きく減らすでしょう。しかし、私の考えでは、ソフトウェア向けのインキュベーターの考えから離れられていない点が多々あります。例えば、彼らは早く顧客に配送できるようプレッシャーをかけますが、これには問題があるのです。ハイレベルなイノベーションを起こせるようなプロダクトを作ろうとした場合、どうしても長い年月が必要なのです。我々の場合、ハードウェアと機械学習技術を融合させつつ、大量のデータを集める必要があったため、インキュベーターと一緒に歩んでいくことが難しかったのです。

実際、アジア市場を理解するように努めたり、繰り返し考え直して現在のコンセプトへ行き着くまでに9カ月、さらにそこからデータ分析やモデルタイプ製作に15カ月掛けています。この2年があったからこそ、私たちはAmbi Climateを納得した水準で世に送り出せました。ハードウェアインキュベーターが要求する約3ヶ月という時間フレームに縛られていれば、実現できなかったでしょう。また、一般的にインキュベーターから受けられるような製造面でのサポートは、ここ香港の素晴らしいハードウェアコミュニティからの助言で十分対応できました。


問:シンガポール発のクラウドファンディングサービスへキャンペーンを投稿し、香港で創業されていますね。なぜあなた方は、南アジアへ注力されているのですか?

答:南アジアに注力しているわけではありません。私たちはアジア全体を見据えています。不運なことに、現時点ではアジア市場全体を包括しているクラウドファンディングサービスはまだありません。 Crowdtivateは、シンガポールの Starhubに後押しされた新プラットフォームで、アジア全体の消費者にリーチできる可能性を持っています。なぜなら、インドネシアならIndosat といったように、各地域の電話事業者とパートナー契約を構築しているからです。(注:インタビュー内容は8月上旬時。8月15日時点のコメントによると、2週間後にKickstarterでの再ローンチを計画しているとのこと)

こういった利点を活かし、私たちはアジアの消費者にリーチしたいと考えています。同時に、我々自身は TechCrunch Beijingや StartupAsia Tokyoへの参加を通して、このキャンペーンを広めていきます。

問:日本市場へ注力する計画はありますか?

答:日本市場にはとても関心があります。実際、我々のデザインは日本のプロダクトから多くのインスピレーションを受けてきました。京都のO-labのように、素晴らしいインダストリアルデザイナーも存在しますしね。今から 、StartupAsia Tokyoでどんな出会いがあるか楽しみです。


問:アジア全体で活発に動いていらっしゃるのですね。では、香港を本拠としていることには、どのような魅力を感じていますか?

答:私たちは香港に多くの利点を見出しています。例えば、香港はアジアのハブとして機能する国際都市であるがゆえに、幅広い分野での経験・スキルを持つ人々を雇い入れられる点です。実際、我々のチームはイギリス、シンガポール、アメリカ、スイス、カナダ、日本の出身者で構成されています。様々なバックグラウンドに裏打ちされた人々が関わることは、各国の消費者ニーズの理解にも貢献します。香港内の市場は小さいがゆえに、自然と国際的な視点で物事を考えるようになるのです。

もちろん、深圳にも多くの利便性を感じています。ただ香港には、中国深圳のサプライヤーや工場をよく知り尽くし、国際的な基準に則って動ける人材が多いため、プロトタイプ製作に不便さを感じることはありません。私たちは、中国へ直接乗り込んだスタートアップを色々と知っていますが、納得できる水準のプロダクトを作ることは容易ではありません。香港はロジスティクスハブとして世界各地への販路構築にも役立ちますし、それら質の高いサービスを低コストで享受することが可能です。

最後になりますが、香港には素晴らしいスタートアップコミュニティが存在しています。他都市と比べると、それは大きなコミュニティとは言えませんが、彼らはとてもフレンドリーで、お互いにリソースやナレッジを共有し合っているのです。ぜひ、足を運んでみて下さい。

※本インタビュー記事の英語版は下記から読めます。
Interview with Julian Lee, CEO of Ambi Labs: Bring your Air Conditioner into the 21st century

※Ambi Labsも紹介しているTech Crunch Japanへの寄稿記事は下記から読めます。
米西海岸と急接近、中国深圳や香港、台湾に根付くハードウェアスタートアップの今

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